動き出した私

心のこと

家を出た日

家を出ました。

言葉にすると、たったそれだけのことです。

でも、あの時の私にとっては、
人生を変える大きな一歩でした。

頭の中には、
あの日の夫の表情が焼き付いていました。

怖くて、怖くて、
体の震えが止まりませんでした。

実家に向かう車の中でも、
実家に着いてからも、
LINEの通知は鳴り続けていました。

画面が光るたびに、
心臓がぎゅっと縮むような感覚になりました。

誰にも話せなかった夜

実家には年老いた母がいました。

ただでさえ心配をかけているのに、
これ以上負担をかけたくありませんでした。

だから、細かいことは話しませんでした。

静かな実家の夜。

私は一人で布団に入り、
天井を見つめていました。

味方なんていない。

そんな気持ちになりました。

悲しさもありました。

悔しさもありました。

怒りもありました。

20年という時間は、
いったい何だったのだろう。そんな思いが、
何度も頭の中を巡りました。

私が最初にしたこと

でも、私は戻りませんでした。

弁護士に相談したわけでもありません。

役所へ行ったわけでもありません。

何か特別な行動を起こしたわけでもありません。

ただ、戻らなかった。

それだけです。

でも、あの時の私には、
それが精一杯の全力でした。

「帰らない」

たったそれだけの決断が、
私にはとても大きなことだったのです。

あれから1年半

あれから1年半が経ちました。

今、私は小さな団地で一人暮らしをしています。

不安が消えたわけではありません。

お金の心配もあります。

将来への不安もあります。

それでも、
あの頃とは違う空気を吸っています。

誰かの顔色をうかがいながらではなく、
自分の呼吸で生きています。

あの夜の私へ

もし今、
あの夜の私に声をかけられるなら、
こう伝えたいと思います。

「大丈夫。」

「すぐには無理でも、ちゃんと笑える日が来るから。」

そして、

「あなたが家を出たことは、逃げたのではなく、自分を守るための大切な一歩だったんだよ。」

とも伝えたいです。

あの日、震えながらも戻らなかった私がいたから、
今の私があります。

あの夜が、
私の人生が動き出した日でした。

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