鍵を差し込んで、ドアを開ける。
「ただいま」
誰もいない部屋に向かって、そう言う。そして自分で答える。
「お帰り」
おかしいと思う?
私はもう思わない。
これが私の日常になった。
冷蔵庫を開けて、今日は何を食べようかと考える。食べたいものは、正直よくわからない。ただ、体のことを考えて、ご飯を炊く。野菜を切る。タンパク質をとる。
食べて、片付けて、お風呂に入って、寝るまでの時間をどう過ごすか。
怒りもない。悲しみもない。かといって、特別な喜びもない。
「ニュートラル」という言葉が一番近い。
静かな夜だ。
以前の私が想像していた56歳の夜とは、全然違う。
でも——これが今の私の夜で、これが私の選んだ夜だ。
なぜ、こうなったのか。それをこれから少しずつ、書いていこうと思う。


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